2018年8月14日火曜日

織田信長の戦い(12) - (42歳) 長篠の戦いと武田家の滅亡 -

武田信玄亡き後


前回の織田信長(11)でお教えした通り、信長は武田信玄の死によって九死に一生を得て、結果浅井・朝倉・室町幕府を滅亡させます。

いよいよ手に負えなくなる織田家に対し、信玄を失った超名門の武田家は内紛ありながらも武田勝頼が後継者として指揮を振るいます。


信長・家康連合軍(35000) VS 武田軍(15000)


そうしてかの有名な長篠の戦いが勃発するのですが、少し諸説をご紹介しましょう。

先ず、信長の有名な「三段撃ち戦法」で織田軍勝利と教科書では学んだと思います。しかし、最近の研究ではどうもそんなものは無かったと、単に数で圧倒しただけという説が有力なようです。

また、対するは日本一と称された武田の騎馬隊とも学びましたが、そもそもこの戦場となった場所は非常に狭いらしく、そんな激しく騎馬隊と鉄砲隊がやり合ったとは思えない。更にはどうも当時の騎馬は今のポニー程度だったという説も有力のようです…。


そして、この戦いで武田軍は実に10000人もの死者を出し武田家の滅亡を決定的とするわけですが、勝頼は元より自分に反発していた内部勢力をわざと一掃させたとも言われています。


武田勝頼は本当に無能だったのか


このように今までは、カリスマ信玄が死に無能な息子の勝頼になり、この長篠の戦いで騎馬隊が織田軍の三段撃ち戦法に敗れ、武田家は滅亡していったとされてきました。

しかし、最近はいろいろな本を読んでも上記のように大分実態は異なっていた可能性が高いです。そして内紛により自滅したという点も含め、本当に無能だったのは勝頼ではなく昔ながらの武田家臣たちであったという考えに私も賛成しております。


いずれにしろ、一時は信長よりも天下に近かった(狙ったかは別として)可能性もある武田家は、信玄亡き後あっという間に滅亡してしまいます。


※武田勝頼に関する参考文献



詳細は画像より


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著者:ひさなお
 
 TOEIC満点、作家、投資家、IT企業グローバル人事、馬券師。
 慶應義塾大学→UCLA→大手IT企業。

  第3回マイナビ作品コンテスト最優秀賞受賞。 

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長篠の戦い


2018年6月9日土曜日

<歴史マニアの半歩深読み> 新大河『西郷どん』 (2)

過去最低レベルで不人気って本当?


この10年で大河ドラマを最後まで観た確率が20%の私ですが、『西郷どん』は最初の記事を書いてから3か月半、毎週録画を欠かさない珍しいお気に入りになっていました。

が、どうにも視聴率が非常に低かったり薄っぺらいという低評価が多いとのこと。

林真理子が歴史扱う時点で深さは分かるだろと言いたいのですが、それより何よりこの面白さが分からないのかと。


別に他人が観ても観なくても極めてどうでもよいのですが(笑)、時代小説なんて書いて小さい賞を獲ってしまったりランキング1, 2位を維持する歴史ブログを運営する身としては、せっかくなので魅力を言葉にしておこうかなと。

1円にもなりはしませんが、まあ、単なる趣味ですな。

<前回記事>


ある意味「まだ始まってもいない」


さて、本作で特徴的なのが徹底的に西郷の「人物」を描いている点です。

もう6月ですが、ある意味まだ「幕末」は始まっていません。

西郷の壮絶な生涯にとってはサブシナリオどころかミニゲーム程度の奄美大島にまさかの1か月を費やすなど、幕末を観たい大半の方にとっては確かに退屈なのかもしれません。

「歴史じゃなくホームドラマかよ」という声があったとしても若干納得はできる。

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ただ、そこがこの『西郷どん』の魅力だと思います。

島流しにあった先で子供を作った。この一行で済ませ得る出来事をあそこまで人と人との絆から描くのはさすがです。林真理子の武器が(珍しく?)非常に上手くはまっている気がします。


西郷が永久の別れをし薩摩に帰ってしまう時など本人たちより泣きました。笑

二階堂ふみと一生島で暮らせるんだからもう日本国とかどうでもいいじゃんかと。笑


日本の歴史上最大の内戦「戊辰戦争」


「幕末が好き」という人は多いですが、新選組や奇兵隊を筆頭に「戦いが好き」という程度であったり、政治家に多い(虚像の)坂本龍馬への憧れやら維新や志士などといった生き方(死に方)への漫画的興味が大半な気がします。

私が他の歴史記事でも書き続けている通り、歴史なんて勝者の作文であり、特にこの幕末には長州による悍ましいテロや会津を代表としたその悲惨すぎる殺戮被害者がいます。


もちろん時代の大きな流れがあり組織がある中での個人なわけですが、「革命に犠牲は付きもの」などという抽象的な話では全く収まらないものがあります。彼らが昭和陸軍になるわけですからね、毎回言いますけど…。


時代の捉え方が多様だからこその「人物作品」


少し前までなら歴史は「楽」だったと思います。物語が決まっていたから。

しかし、最近は研究が進んできたり信憑性が高くかつ斬新な仮説も出てきたため、「最初に作られた物語」をそのまま映像にしてももはや価値がありません。


どの説をどれだけ取り入れ、歴史の空白をどう埋めて何を伝えるのか。

小説でもドラマでも漫画でも著者の歴史センスがより問われる時代になったと思います。


その点から言って、人物に焦点を当てて掘り下げる西郷どんは「上手い」。世界観を確立しその土俵の中で負けない勝負を続けている感じでしょうか。

そのため私のように一度気に入ってしまうとサトウキビを刈り取っている二階堂ふみをぼんやり眺めているだけで「今回もよかったわ~」とかなるし、入り込めないと「……なんだこれ」となるのかなと。


ここからどう描くかが真価


ここからいよいよ戦いです。それは単に幕府軍や長州とドンパチやるという意味ではありません。

と言うか、実は西郷隆盛自身はあまり戦場で指揮はしません。後に海軍大将となる弟が戦場で活躍しました。

西郷はこれから、先ずは薩摩の中で戦うことになります。

そしてもちろん、最後は無二の親友であった大久保利通と…。


ハートフルだけでは満たせない幕末。いよいよどう描くのか見届けるのが楽しみです。


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著者:ひさなお
 
 TOEIC満点、作家、投資家、IT企業グローバル人事、馬券師。
 慶應義塾大学→UCLA→大手IT企業。

  第3回マイナビ作品コンテスト最優秀賞受賞。 

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2018年2月25日日曜日

<歴史マニアの半歩深読み> 新大河『西郷どん』

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戦国5回、幕末4回、最後まで観た率20%(この10年)


この10年で戦国時代が5回、今回の『西郷どん』で幕末も4回目となる大河ドラマ。

こんな歴史ブログを書いたり(戦国ブログランキング1位らしいです今)、小さな文学賞を獲る程度には時代小説(歴史小説よりも何でもあり)も書いている私ですが、最後まで観たのは『軍師官兵衛』と『真田丸』くらいです。実は『龍馬伝』の時は留学しており終わり頃しか観られなかった…。

昨年の直虎は出だしはよかったですが、一生くんが死んでからは見る気が無くなりました。


歴史好きはすでに一般的な説からマニアックな解釈まで知識はたらふくあり、「この作品ではどう描くか」を楽しみにしています。直虎に関しては元々情報が乏しく、歴史の大局に大した影響も与えていません。正直「歴史的にどうでもよい小さい家のホームドラマ」になってしまいました。

最後の本能寺では以前に私が熱烈な書評を書いた新説が採用されており(最終回だけ確認)そこだけは安心しましたが。


林真理子なのに(だから?)面白い『西郷どん』

さて、今年の大河ですが、一か月半観てきて今回は期待できます。


[おすすめ度] ★★★★★  

[歴史学べる度] ★★★☆☆

[テンポ・面白さ] ★★★★☆

[演技力] ★★★★★



原作林真理子の時点で、「ああ、また歴史無視したホームドラマか…」と正直期待できなかったのですが、始まってみるとなかなか面白いです。

先ず、流行りの俳優を使い可愛さや色気頼みのキャストではなく、実力派俳優による安定感ある布陣ですよね。

また、可も不可もない林真理子氏(失礼、でもコピーライターとかいう商売からそこまで成り上がればもういいでしょ)の原作によって、結果的に「ドラマとしての面白さ」が上手くはまっている気がします。


さすがにジョン万次郎と若き西郷が偶然会ったりと、「知ってる歴史人物とりあえず突っ込む」感にはどうしようかと思いましたが、まあ、この物語が描きたいポイントが別であればドラマとして見ればいいのかなと。脚本や演出が上手いのでしょう。


そもそも今なぜ討幕側を描くのか

それでは歴史の話をしましょう。

そもそも、討幕側を正義として描くことはもはや時代遅れだと私は考えます。

尊敬する人物は坂本龍馬。憧れる生き方は幕末の志士。

そんな「フィクション」を本気で口に出せるのは政治家くらい頭があれじゃないとしんどいです。

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詳しくは下記書評で書きましたが、研究が進んできた現在では、例えば最高級の英雄として描かれる坂本龍馬は、司馬遼太郎氏が創り出した完全なる「虚像」であり、ドラマや映画で描かれる歴史の常識の多くが「単なる物語(=嘘)」であることはむしろ常識ではあります。

明治維新という過ち [原田伊織氏]  


また、歴史とは勝者が作る物です。

戦国は秀吉と家康が、幕末は長州と薩摩が「自分たちの物語」に書き直しました。

今では特に長州の「異常な」殺戮には、正直「革命に犠牲は付きもの」などという抽象的な話では全く収まらないものがあります。

彼らが昭和陸軍になるわけですが……、まあこれ以上この話をしても私に得る物はないのでこのへんで。


西郷隆盛だけは好き

その中にあって、西郷隆盛だけは好きです。

戦国に比べてはるかに資料の多い幕末ですから、大分彼の人物像も再現性が高くなってきたと思います。

彼の、自分の利益を超えてどこか天命に突き進む姿は、たしかに歴史に名を遺すべき人物です。

よく考えれば、彼は最終的に歴史側の「敵」になるわけですが、それでもこれだけ英雄として語り継がれてきたことを考えると、それだけ稀有で正義の男だったのかもしれません。


諸説ある大久保利通との仲


まだドラマは始まったばかりでネタバレになるので今回は控えます。(歴史にネタバレって何だ)

しかし、やはり西郷とくれば大久保(瑛太)との真相。

司馬遼太郎氏が描いたような本当に親友だったのか、それともいずれ殺し合う根源には大久保の闇があるのか…。

おそらく『西郷どん』では「西郷の生き方としてこうするしかなかった」という構成にするのでしょうが、数奇な人生を辿る西郷をどう描くのかは楽しみの一つです。


以上、1円にもならないながらせっかくランキング1位だし更新するか、ということで幕末記事でした。

(よく考えると戦国ブログに書く記事ではないな。笑)


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著者:ひさなお
 
 TOEIC満点、作家、投資家、IT企業グローバル人事、馬券師。
 慶應義塾大学→UCLA→大手IT企業。

  第3回マイナビ作品コンテスト最優秀賞受賞。 

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